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〜 布と糸についてのお話 〜
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◆ファインフローバと、「ちいさなてしごと」の刺繍糸ができるまでのお話です。
ファインフローバには、今まで花糸を2本どりでステッチすることが多く、2本をよじれなく
きれいに引きそろえることに少し苦労したり、時間がかかったりもして、気軽にさくさく・・
という感じにはいかず、花糸のような質感でもっと太めな糸があれば良いのに、
といつも感じていたのでした。このことをクロバーさんにお話ししたところ、新しく
刺繍糸を作っていただけることになり、2010年の秋から糸作りに関わる日々がスタートしました。
ファインフローバは刺しやすいため、キットにも向いた生地だと感じ、
この生地に合う糸を、
ということで糸作りを進めていきました。
糸の色の染めを北欧らしいスモーキーな10色でお願いし、染め上がった糸でこのように柄の試し刺しをし、
布や他の糸との相性を判断する、、、といった作業を重ねて今回の刺繍糸は作られました。
北欧の古い織物の実物や古書などから好みの柄を見つけ、写真を直接見ながら、
または図案を起こしたりしながら、実際に
織り刺しの技法で試し刺しをし、右のような
いろいろな柄の小さな刺繍片にカットし、
並べ替えたりしながら柄の組み合わせや、
配色を決めていき、今回のキットや
図案集が出来ました。決定する事柄がとても多く、
たくさんの時間を費やしましたが、
奥深く、おもしろい作業でもありました。
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糸作りにおいて注意すべき点はたくさんありました。花糸とかけはなれた質感にならない
ようにすること、光沢が出過ぎない事、毛羽は多めにしてふんわりとさせること、撚りすぎずに
やわらかい糸とすること、織り刺しをした際にファインフローバの織りのホールにちょうど良い
太さにすることなど。
◆
糸をつくるにあたって、いろいろなメーカーの花糸の形状を細かく観察し、いろいろと実験も
してみましたが、やっぱり自分好みのものは作品にも多用してきたアメリカのGinnie Thompsonのもの
だと感じました。デンマーク、ドイツのものと比べてこの糸は毛羽が多く、撚り方が一番ゆるりと
していて、布に刺した時にふっくらとし、撚りが甘めなためステッチに厚みが出ない気がします。
そして、織り刺しをした時にとなり同士の糸が離れすぎず、ふわりとうまくおさまってくれます。
撚りがきつめな糸だと、織り刺しの際にはとなり同士の糸に隙間が出来て目立ってしまうのです。
最初のサンプル糸を作ったスウェーデンの織物用の糸もGinnie
Thompsonの質感に似ており、
太さ、毛羽、拠り方などはこんな感じで決まっていきました。
光沢問題でもつまづきました。撚りを甘めにし、太さを太くすると光沢がどうしても出てきて
しまうことがわかり、改善を重ね、光沢感を最小限にしていただきました。
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そして最後に、10色全ての色が、どの色と合わせても相性の良い色で染め上がること。
実際に刺繍糸を使う際の重要な注意点だと感じます。これらすべての注意点をひとつひとつ、
やり直しを重ねながらクリアしていき、最終的にキットサンプルを作る糸が出来上がりました。
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◆「ちいさなてしごと」の刺しゅう糸を使って試し刺しをしてみました。
糸の購入をご検討下さっていましたらご参考にされて下さい。
Zweigart : Fein Floba
1cm約10目
〜 ファインフローバでのステッチ 〜
水通ししていない状態でのクロスステッチ。
生地に糊がしっかりとついているため、ステッチもギチギチと硬く仕上がりました。
生地のつれはギリギリ起こらないような感じです。
水通し後(お湯+洗剤使用)のファインフローバにクロスステッチ。糊がすっかりとれて
生地がやわらかくなったぶん、ステッチのギチギチ感もほとんどなくなりました。
太めな糸のせいか、みっちりと詰まった雰囲気にはなりますが、刺しにくくはなかったです。
生地自体も厚めなので仕上がりには厚みが出ます。ファインフローバは1cm10目なので、クロスステッチを
するならばあともう少しだけゆるみのある生地だともっとこの糸と合うかな?という感じがしました。
織り刺しをすることを優先に作られた糸ではありますが、クロスステッチもじゅうぶん
楽しんでいただけると思います。
水通し後のファインフローバにクロスステッチ。
生地のつれなども起きません。初心者の方がこの糸と生地でクロスステッチをされる際にも
きっと刺しやすいことと思います。
水通ししていない状態でのストレートステッチ。
ステッチidee's vol.11に掲載していただいた黒いタペストリーの
モチーフの一部をステッチしてみました。猫みたいなフクロウです。
水通し無しでも、このステッチだと問題ありません。とても刺しやすかったです。
掲載誌ではブラックにアイボリーの刺しゅうでしたが、ファインフローバにカラーの
糸でも良さそうです。
水通ししていない状態での織り刺し。
ステッチidee's vol.12に掲載していただいたトレイハンガーの
ちょうちょです。織り刺しなのでまったく問題ありません。
トレイハンガーは大きな目のチャコールグレイのウールコングレスにアイボリーの
ウール糸の組み合わせでしたが、この生地だととてもちいさいちょうちょになりました。
たくさん並べてステッチしてみたいです。
水通し後のファインフローバにサテンステッチ。
以前に販売した針刺しのお花モチーフです。以前は花糸2本どりでステッチ
していたので、2本をきれいに引きそろえるのに苦労していました。
この糸だとほんとに刺しやすく、スイスイと進みました。
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Zweigart : Cork
1cm約8目、リネン100%、ドイツ製
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コークでのステッチ 〜
ファインフローバよりも目が粗い生地のため、とても刺しやすいですが、1本どりでの
クロスステッチは少し隙間が空くような感じがしました(右)。そこで、花糸を1本プラスして
刺してみると隙間もちょうど良くなり(左)、ステッチに深みが出て雰囲気も良くなりました。
毛羽が多めなので、あたたかみがある仕上がりとなり、秋冬の刺しゅうにも
良いと思います。
コークの生地でのアジュール刺繍にも良さそうです。
パールコットンでステッチされることも多いフォーサイドステッチも↑、この糸だと
素朴な質感に刺し上がります。↓こんな模様も出来ますよ(画像のものは花糸ですが)。
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Zweigart : Dublin
1cm約10目、リネン100%、ドイツ製
〜 ダブリン 〜
リネンで1cm10目のダブリンはクロスステッチにも良い感じでした。
これもわりとみっちりとした刺し上がりになります。目が粗いので織り刺しでは
裏に渡る糸が濃い色の場合は目立つかもしれません。
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Zweigart : Cashel
1cm約11〜12目、リネン100%、ドイツ製
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カシェル 〜
ダブリンよりももう少し目が詰まったカシェル。織り刺しをするとこんな感じです。
裏に渡る糸はそんなに目立たないです。ステッチはややぷっくりと詰まった感じの
仕上がり。なかなか良いと思います。
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Z I.C.Leibfried : Feinsiebleinen
1cm約10〜11目、リネン100%、ドイツ製
〜 アジュール細めリネン 〜
アジュール用の生地なので糸を引きやすいように織り糸が細めです。
この生地でのクロスステッチはとてもスムーズでした。みっちり詰まった感じもそんなに
ありませんでした。クロスステッチにはおすすめの生地ですが、廃番の色が
多いみたいです。
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Zweigart : Lugana
1cm約10目、綿52%・ビスコース48%、ドイツ製
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ルガナ 〜
1cm10目なのでこの糸での織り刺しにはぴったりです。生地がやわらかいため、
とても刺しやすかったです。こんな濃いめの色への織り刺しも良いですね。
ストレートステッチ、サテンステッチもこの生地ではきれいに仕上がり、刺しやすくて
良いと思います。
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Tvistsom
〜 ツヴィスト刺しゅう 〜
左画像の生地はジャバクロス細め、10cm45目のものです。この糸でツヴィストをするならば
キャンバス以外ではこの生地が良さそうです(キャンバスは試していないです)。
ツヴィストにすると、目がとてもふっくらとするためか光沢感がやや目立ちます(左画像の中央のピンク)。
それを軽減するため花糸を1本ブレンドしてステッチしてみると、なかなか良い感じでした(左画像のグレイ+グリーン)。
ちなみに、左画像の一番上はクロスステッチで、ちいさなてしごとの糸と花糸とを1本ずつブレンドして
ステッチしています。この生地にジャストな感じですので、全面を埋めるのに向いています。
右画像の生地はZweigartフローバ。上のパープルは試作糸の色ですが、1本どりでツヴィストを
したところ。これも良い感じの刺し具合。下はちいさなてしごとの糸と花糸を1本ずつブレンド。
これもなかなか良い感じですよ。Zweigartフローバは価格が高めなのでモチーフだけの
ツヴィストなどに良いかもしれません。全面を埋めるならばジャバクロス細めが価格も低くて
枠もはめられるので気軽にステッチできます。
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